美しく並ぶ茅葺と自然

2025-03-25

 

京都府南丹市美山町北集落『かやぶきの里』と呼ばれている。

39棟の茅葺は現在も変わらず住民が住み続けている民家ばかり。人が住むからこそこの風景は保たれている。

 

高いところから集落の全景を見ていくと茅葺民家の並びは美しく同じ方向に並んでいることがわかる。

山の稜線に沿って、川の流れに沿って平行に立ち並ぶ。また、下から見ると山裾に並んでいることからひな壇状に一望することができる。

確かに美しく並び、山と川と茅葺きの暮らしは美しく整えられたひな壇そのものである。

 

このように美しく並んでいるのには単に日本人の美的センスだけではなく、暮らしの知恵として大事にしてきたいくつかの要素からなっている。

諸説あるうちの一説を紹介したい。

 

全国津々浦々さまざまな場所に民家が存在する。特に急な山地ではこのひな壇のように同じ並びで家を横向けに細長く取っている民家が見られる。山の斜面で平地を取るためにはかなりの労力が必要で、横に長くすることで平地に整地する作業を楽にした。

かやぶきの里の民家は正方形とも行かないが横に長いというほどのものはない。斜面ではあるものの川と山の稜線、風に大きく関係しているという考え方ができる。

 

山に囲まれた谷は風をよく流す。このあたりの茅葺き民家は入母屋で破風がある。破風がある面を川風が流れるようにむけている。屋根を痛めないように、囲炉裏の煙などもうまく流すことができる。単一的な理由ではなく、さまざまな角度でその地にあった民家がオーダーメードで作られていた。住む人や場所に合わせて作られた民家が今もこのように残っていることを感じ、今の私たちの暮らしに対しての想いを振り返るきっかけになれば嬉しい。