『てんごり』が繋いできた伝統と職人
かやぶきの里には39棟の茅葺き屋根が残る。
その多くは江戸時代後期以降のもので、古いものは記録が残っている限りでも240年ほど。
茅葺は永久的に葺き替えることで何百年も住み続けられる民家だ。
茅葺民家は木・竹・ススキ・藁・縄・土などいわば身の回りに存在している素材で作られている。
故に自らで修復をし、たまには専門的な知識を持つ職人に教えを乞いながら伝統は紡がれてきた。
もちろん現在も茅葺民家が残るかやぶきの里では、今も屋根の葺き替え作業が行われている。
茅葺き屋根の材料となるススキは川向の茅場で育成し、村のみんなで刈り取りをする。
昔はそうした茅を茅葺き民家の屋根裏にストックし、屋根が朽ちてきた民家ごとに集落で吹き替えの取り決めをし、『てんごり』によって葺き替える。
『てんごり』
よく聞く言葉で言うと結(ユイ)と言うものに近いだろうか。基本的に屋根の葺き替えは住民たちで行っていた。もちろんその家の家族だけでは不十分なため、集落で集まり、『てんごり』として一緒に作業した。
信用と信頼、助け合いの中で技術と暮らしは繋がれてきた。
今は茅葺き職人と呼ばれる専門の職人が屋根の葺き替えを行うケースがほとんど。昔は茅葺き職人という仕事はあったものの、基本的には農業と兼業で季節になれば茅葺き職人の仕事をしていた。今では日本の伝統を支える貴重な役割を担っている。
かやぶきの里では年に数回タイミングが良ければ葺き替えを見ることができる。伝統を守りつなぐ職人たちの尊い仕事を遠くからそっと応援していただきたい。
わたしたちが綺麗だなぁ。と感じるこの風景には遥か昔からここに住み、暮らしのために美しさを保ってきた人々。暮らしの知恵と伝統を大切に引き継いできた人々。多くの暮らしてきた人々の生き様でこの美しさが保たれている。そんな貴重な暮らしに深く深く敬意を表したい。